更新日:2019年8月4日 | コラム
「2022年の生産緑地問題」が不動産に与える影響を考察する|我々はどう対処すべきか


不動産業界では、「2022年の生産緑地問題」による影響が懸念されています。生産緑地に指定された農地を所有している方だけでなく、土地を持っている多くの方に影響を与えかねないと言われている一方で、影響は限定的であるとの見方もあります。今回は、「2022年の生産緑地問題」が不動産にどのような影響を与えるのかを考察します。

今問題視されている2022年の生産緑地問題とは

Young potato plant field in the morning,organic farm.

「2022年の生産緑地問題」とは、生産緑地に指定されている農地の多くが2022年に期限切れを迎えることで起こるとされる問題です。生産緑地は税制面で優遇を受けられるというメリットがあり、1992年の指定開始以降その面積が概ね保全されてきました。そして期限を迎える2022年には生産緑地が一斉に宅地へと変わることが予想されています。その結果不動産の供給過多になり、不動産価格が下落するのではないかと懸念されているのです。

生産緑地問題を詳細に理解するためには、生産緑地の概要や生産緑地法という法律について知ることが必要です。これから生産緑地について解説します。

「生産緑地」とは何か

Tractor spraying pesticides at  soy bean fields

生産緑地とは、「生産緑地法」によって要件が定められている市街化区域内の農地や山林のことです。都市部の農地は住民の生活と隣接した農業生産の場であり、そして住民の生活環境を保全する緑地であるため確保すべきという考えから、都市農地保全活動の一環として保全されています。

日本では人口増加により、市街化区域内の農地を宅地へと変えることが推進されていました。しかし、2015年の都市農業振興基本法制定を受けた2016年の都市農業振興基本計画の閣議決定によって、都市農地は宅地にすべきものではなく、都市にあるべきものとして位置付けられたのです。

それから都市農地を保全するため、様々な制度措置が行われました。後ほど詳しく解説しますが、生産緑地法の改正も、都市農地である生産緑地を保全するためのものです。

生産緑地に指定されるためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。

・公共施設等の敷地として適していること
・農林業の継続が可能であること
・500㎡以上の一団の農地であること

なお500㎡以上という面積に関する条件は、市区町村によって異なる場合があります。市区町村が条例を定めることで、300㎡まで引き下げることが可能です。

生産緑地法の概要

生産緑地法は、1974年に制定された法律です。当時は計画的に市街化を測るために、自然環境保全よりも宅地等にすべき対象である市街化区域内の開発を目指していました。市街化区域内の農地も開発対象とするため、農地に固定資産税と都市計画税を課税することにしていました。通常農地にかかる固定資産税は宅地の何十分の一〜何百分の一程度なので、市街化区域内の農家は高い税負担に悩まされたことになります。そのようにして農家が農地を宅地へと転用させるのを促そうという考えでした。

しかし農業を続けたい農家もいたので、救済措置として「生産緑地制度」が作られました。1991年に生産緑地法を現行のものに改正し、1992年から開始した生産緑地の指定を受けて30年間営農するのであれば、固定資産税を「宅地並み課税」ではなく「農地課税」とすることにしたのです。

生産緑地には、相続税の納税猶予制度が適用されます。生産緑地を相続した場合、そのまま営農を続ける限りは相続税の一部を支払わなくてよいとされました。生産緑地以外の農地には納税猶予制度が適用されないため、生産緑地に指定されることで大きな節税効果が得られます。

そして、生産緑地に指定された場合は原則30年間、農地から宅地への転用はできないと定められました。指定から30年が経過した場合のほか、農業の従事者が死亡等で農業を続けることができなくなった場合に、市町村長に買い取りを申し出ることができます。

日本における生産緑地の占める割合

国土交通省が1992年から継続的に公表している「土地所有・利用概況調査報告書」には、土地情報を把握するためのデータが掲載されています。2018年の報告書を参照し、日本の生産緑地地区面積を圏域別に表した結果が以下です。

・東京圏:7,369.75ha(約56.8%)
・名古屋圏:1,292.80ha(約10.0%)
・大阪圏:3,306.80ha(約25.5%)
・地方圏:1,003.10ha(約7.7%)
・全国合計:12,972.45ha(100%)

市街化区域内の生産緑地地区面積(単位:ha)

地方にも生産緑地は存在するものの、東京・名古屋・大阪の3大都市付近に集中していることがわかります。

また、市街化区域面積のうち生産緑地地区が占める割合は、東京圏が2.1%、名古屋圏が、0.9%、大阪圏が1.7%、地方圏が0.1%、そして全国では0.9%です。

(参考:国土交通省 平成30年度 土地所有・利用概況調査報告書 p76 表2-(9)-② 市街化区域内の農地面積 -圏域別-

「生産緑地」と「宅地化農地」の違い

高度経済成長期に大都市で大量の労働力が必要となったことから、住宅不足問題が起こりました。そこで政府は、住宅不足を解決するために農地の宅地転用を促すことにしました。そんななかでも都市部に農地を適度に残すべきという考えが強く、1974年に生産緑地法が制定されました。

しかしその後も住宅の需要は衰えず、農地は次々と宅地に変わっていきました。そこで1991年に生産緑地法を改正し、「生産緑地」と「宅地化農地」に分類することが決まりました。

この改正により、「生産緑地」は緑地の環境機能を維持するために保全する農地、そして「宅地化農地」は宅地への積極的な転用を進めていく農地であると定められたのです。土地の目的を明確に分類することで、都市計画を促す効果が得られました。

生産緑地法の改正

生産緑地法は1974年に制定されて1991年に改正されましたが、その後2017年にも一部改正されています。2017年の法改正は都市緑地法等の改正とともに行われ、まちづくりに関する諸問題の解決が促されると期待されています。生産緑地法改正の具体的な内容については、後ほど詳しく解説します。

2022年に不動産価格へはどう影響するのか

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不動産業界では、不動産市場への影響はあまりないという意見も、不動産価格の下落が起こるという意見も両方確認できます。生産緑地問題が騒がれているのは、生産緑地に指定されている農地が2022年になると一気に宅地化し、不動産が供給過多になって価格が下がるのではないかという懸念があるからです。それぞれの意見の根拠について、詳しく解説します。

不動産市場への影響は限定的と考えられる理由

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まずは、2020年の生産緑地問題が不動産市場に及ぼす影響は限定的であるという意見から見ていきましょう。あまり影響が大きくないという意見を支えている根拠は、生産緑地法の改正や都市農地貸借法の成立など、国が対策を実施していることです。

生産緑地法の改正が大きく関わる

2022年に期限切れを迎えて大量の生産緑地が指定解除になったとしても、2017年に行われた生産緑地法の改正により、不動産市場への影響は限定的となる可能性があります。ここでは2017年の生産緑地法改正によって何が変更されたのか、詳しく解説します。

「特定生産緑地制度」の創設

30年が経過すると生産緑地の指定が解除され、市町村長に対していつでも買い取りの申し出が可能になります。しかし、農地が生産緑地でなくなることは都市計画上不安定な状態であるとして、2017年の生産緑地法改正で対策が盛り込まれました。それが、「特定生産緑地制度」の創設です。

特定生産緑地制度は、申し出基準日が近づいてきた生産緑地について、市町村長が利害関係人の同意を得たうえで申し出基準日より前に特定生産緑地として指定することで、買い取りの申し出が可能となる期日を10年延長する制度です。

従来の生産緑地に適用されていた税制面での優遇は、特定生産緑地に指定されたあとも継続されます。宅地にするよりも大幅な節税ができるというメリットがあることから、宅地化せず特定生産緑地の指定を受ける生産緑地が多いと考えられます。

生産緑地の面積の改正

生産緑地の指定を受けるためには、一団で500㎡以上という面積に関する要件が設けられていました。そのため小規模な農地はたとえ営農を継続する意思があったとしても保全対象とならず、優遇措置を受けられない状態でした。

また、複数の所有者がいる農地が生産緑地に指定され、相続等によって一部が解除されて面積が500㎡を下回ると、生産緑地に指定されている農地全体が道連れで解除されてしまうという問題もありました。

そこで法改正を行った結果、市区町村が生産緑地の面積要件を引き下げるとする条例を制定した場合については、300㎡以上であれば生産緑地として認められるようになったのです。また、同一または隣接する街区内に複数の農地を持っている場合について、一団の農地とみなして生産緑地に認められるようになりました。

建築規制の緩和

生産緑地に設置できる建築物は、農業用施設に厳しく限定されていました。ビニールハウスや集荷施設、収納施設、休憩所といった営農に最低限必要な施設しか、設置が認められていなかったのです。しかし、農家からは収益性を高めるために、直売所や農家レストランの設置許可を求める声が相次いでいました。

これを受けて法改正を行い、生産緑地に設置可能な建築物を追加しました。追加されたのは、農産物等加工施設や農産物等直売所、そして農家レストランです。その結果農家が収益性を高め、営農を継続できる可能性が高まりました。

都市農地貸借法の成立

また、2018年に成立した「都市農地貸借法」(正式名称:都市農地の貸借の円滑化に関する法律)も、生産緑地の期限が切れても不動産市場に大きな影響を及ぼさないと考えられる根拠の1つです。

都市農地貸借法は、所有者が生産緑地を他の人や企業に安心して貸せるようにするための法律です。生産緑地の貸し付け時に問題となる2つの障害を解消することを目的としています。

まず、所有者は貸した生産緑地が返ってこないかもしれないという不安を解消できます。これまで農地の賃貸借契約には法定更新が適用されていたため、契約は自動的に更新されて知事が契約を更新しないことに許可を出さない限り、農地が返ってこないというデメリットがありました。都市農地貸借法では法定更新が適用されず、契約期間が終了すれば農地が返ってきます。

そして、相続税納税猶予が継続されるというメリットもあります。これまでは生産緑地を相続した場合、死亡するまで自分で管理をすれば莫大な相続税を支払わなくてよいという納税猶予が適用されていました。しかし、他人に生産緑地を貸し付けた場合は納税猶予が打ち切られ、莫大な相続税を支払わなくてはなりませんでした。そこで、都市農地貸借法では生産緑地を貸し付けても相続税納税猶予を継続できると定めました。

生産緑地を借りる際には、市区町村長に事業計画を提出する必要があります。借りた生産緑地は農業に活用しなければならないので、都市農地貸借法を活用して貸し付けを行うことで、2022年に生産緑地が一斉に宅地化するのを防止できます。そのため、不動産市場への影響は限定的であると考えられます。

不動産価格の下落が起こると予測できる理由

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生産緑地法の改正や都市農地貸借法の適用により、指定を受けた生産緑地が2022年に一斉に宅地化する事態を避けられる可能性が高まりました。そのため不動産市場に大きな影響はなく、不動産価格は下落しないと考えられている一方で、生産緑地の期限切れを2022年問題として懸念する声も根強くあります。2022年になると不動産価格の下落が起こると予測できる根拠について、以下で解説していきます。

固定資産税が上がる

不動産価格の下落が起こると予測できる1つ目の根拠として、生産緑地の指定解除に伴う固定資産税額の増加が挙げられます。生産緑地の指定を受ける大きなメリットが、固定資産税の猶予制度です。本来であれば宅地並みの固定資産税を課される都市農地に農地並みの固定資産税が適用されることで、負担税額が何十分の一〜何百分の一にまで減額されます。

1992年の指定から30年が経過した生産緑地は、2022年に指定解除されます。生産緑地の指定が解除された農地には宅地並みの課税をされるため、農地として維持することは難しくなります。所有者は自治体に買い取り請求を行えますが、実際には自治体も財政難などの理由でこれまで生産緑地の購入にはほとんど応じてきませんでした。自治体が生産緑地を買い取れない場合は営農者に斡旋しますが、それでも買い手がつかないことも大いにあり得ます。

莫大な固定資産税の支払いに耐えられず売却を選択するのは、どの所有者も同様です。そのため生産緑地であった多くの農地が一気に売却されるようになり、供給過多となって土地の価格が下落すると予測できます。

また、売却のほかにマンション等を建てるという選択肢もあります。しかし、やはり多くの宅地で住宅が供給されるようになることで供給過多となり、価格や賃料の下落が考えられます

「特定生産緑地制度」を施行するも条件が限られる

上述したように、「特定生産緑地制度」で期間を10年延長するためには、条件を満たさなければなりません。結局制度を利用できるケースは少なく、多くの生産緑地が売却され不動産価格が下落すると考えられます。

特定生産緑地として指定できるのは「当該申出基準日以後においてもその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるもの」と生産緑地法で定められています。しかし、各市町村によって状況が異なることから、国が明確な指定基準を設けているわけではありません。

特定生産緑地の指定は、あくまで地域の実情に沿って市町村長が決定するものです。そのため市町村長が特定生産緑地としてふさわしくないと判断した場合は、指定を断られる可能性もあります。すべての生産緑地が特定生産緑地に指定されるとは限らないため、制度を利用できずに宅地化せざるを得ない農地が増え、不動産価格が下落すると予測できます。

2022年頃の不動産価格には別の要因も大きく関わる

2022年頃に不動産価格が下落すると予測できる原因は、生産緑地問題だけではありません。不動産価格は、さまざまな要因によって変動します。2022年頃は人口減少や厳しい銀行融資などあらゆる要因が影響し、不動産価格が下落すると考えられているのです。

人口の減少

人口の減少は、不動産価格が下落する要因の1つです。日本の人口は2008年から減少を続けており、今後も減少は続いていきます。人口が減れば、それだけ住居を欲する人が減ります。人口の減少によって需要が減ることで、不動産価格は下落すると考えられているのです。

銀行融資の審査が厳しくなる

銀行の融資審査が厳しくなっていることも、不動産価格下落の要因になり得ます。多くの銀行では、2017年頃から不動産に対する融資を引き締める傾向が続いています。これは相続税の法改正により基礎控除額が引き下げられ、投資用不動産の需要が高まりマンションやアパートが増えすぎたせいで供給過多となったからです。金融庁が監視を強めていることで、銀行の融資は今後も厳しさを増し、不動産価格は下落すると予測できます。

2025年問題

もう1つの不動産価格下落要因として考えられるのが、「2025年問題」です。「2025年問題」とは、2025年になると5人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、介護や医療などに使われる社会保障費が急増すると懸念されている問題です。不動産業界では、相続件数が増えることで土地や空き家の売却が増え、供給が過剰になることで不動産価格が下落すると考えられています。

状況が不透明な今、どう対策をすべきか

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2022年の生産緑地問題に伴い、不動産価格が下落するか否かという議論が盛んに行われています。それぞれの意見に明確な根拠があるからこそ、今後不動産価格がどうなるのかわかりづらいのが現状です。

そんな先行きが不透明な今、できる対策をご紹介します。

下落する土地かどうかを見極める

まずは自分が所有している土地の価格が下落するかどうかを見極めることが重要です。その土地の価格が下落するかどうかは、以下の要素を確認することで見極められます。

土地周辺の生産緑地の割合

土地を所有している場合は、土地周辺の生産緑地の割合を確認しましょう。立地が良い土地は不動産市場では高値で取引されますが、自分が所有している土地の周辺に生産緑地がある場合は注意が必要です。

2022年以降に生産緑地が大量に売却されるのであれば、近隣の不動産供給が過剰になり、結果的に自分の土地の価格が下がる可能性があります。周辺に生産緑地がどのくらいあるか、自治体に尋ねてみることをおすすめします。

周辺に生産緑地があるかどうかは、ネットでも確認できます。「自治体名 都市計画図」で検索することで各自治体の検索システムページがヒットします。そこから調べてみてください。

自治体の施策の有無

自治体が生産緑地に対してどのような施策を取っているか確認することも、2022年問題で不動産価格が下落するかどうかを知る方法の一つです。

大量の生産緑地が存在するのに自治体による買い取りを行っていないなど十分な対策が取られていない場合は、2022年になると一斉に生産緑地が売却される可能性があります。

また、国土交通省は「特定生産緑地指定の手引き」において、特定生産緑地について周知作業を速やかに行うよう自治体に促しています。自治体が周知を十分に行っていない場合も、特定生産緑地の指定を受けずに売却される農地が多いと予測でき、不動産価格が下がると考えられます。

不動産のプロに相談してみる

2022年以降、不動産価格は下落するか否か。これはどちらの意見にも正当な根拠があるため、現時点での予測が立てづらいと言えます。

ご自身で不動産価格の変動を予想して動くことが難しいと感じている場合は、プロに相談してみるのも一つの方法です。複数の不動産会社に所有している不動産の査定を依頼し比較することで、不動産の価格が明確になります。気軽に、不動産のプロに相談してみましょう。

まとめ

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2022年の生産緑地問題は、不動産価格に影響を与えることが懸念されています。生産緑地法が改正されたことで不動産市場への影響は限定的になるとする意見もあれば、指定解除により一斉売却が始まって不動産価格が下落するという意見もあります。土地周辺の状況や自治体の政策を調べるなど、今からできる対策を進めましょう。

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MODERN TIMES編集部

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