更新日:2018年10月8日 | コラム
家賃滞納者を強制退去させる流れ|執行に必要な手続きと費用まとめ


家賃を長期間滞納している借主がいてお困りではありませんか。何度支払いを催促しても反応がない場合、「強制退去しかないのでは?」と考えるのは当然でしょう。家賃滞納者を強制退去させるにはかなりの時間やお金がかかります。
本記事では、家賃滞納者を強制退去させる流れについて、必要な手続きと費用などについてまとめました。最後に強制退去にかかる費用を節約する方法についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

強制退去をさせるには?執行するための条件とは

強制退去を求めるための条件

家賃の滞納を理由として強制退去させるためには、以下3つの条件すべてを満たす必要があります。

■3ヶ月以上の長期間の滞納

法的に具体的な滞納期間が定められているわけではありません。ただ、一般的には3ヶ月以上の長期間、家賃の滞納があることが条件のひとつです。

■支払いの意思がない

支払い通知や話し合いをしても支払いの意思がないことも、強制退去を求める条件のひとつです。ただし、連帯保証人から家賃の支払いがあった場合、家賃の滞納を理由とした契約解除は難しくなります。

■貸主と借主の信頼関係が壊れている

長く家賃が支払われないまま部屋だけを貸している状況が続くと、バランスが損なわれ、実質的に信頼関係が壊れていると認められます。

強制退去が認められないケース

強制退去を求められる3つの条件を満たしていても、以下のようなケースが当てはまる場合は強制退去ができません。

■借家人による家賃滞納が一時的なものである場合

借家人が失業や健康上の理由などで一時的に支払い不能に陥っている場合は、支払いの意思はあっても実際の支払い困難な状況のため、信頼関係の喪失までは認められません。

■大家側の権利の濫用と認められた場合

大家側が建物の修繕を怠っている場合は、信頼関係が壊れているとまでは認めてもらえません。また、勝手に部屋の鍵を変えて部屋に入れなくしたり、部屋の中にあるものを勝手に売って家賃に充てたりといった行為は逆に大家側の立場を悪くします。

強制退去させるのにも時間がかかる

強制退去の実行にはある程度時間がかかります。強制退去させるための条件がそろって起訴したとしても、実際に強制退去が実行できるのは起訴から5ヶ月後です。また、強制退去にかかる費用はワンルームの場合でおおよそ15万円、一軒家の場合では荷物の搬出費用がかかるため35~55万円はかかります。

できれば話し合って交渉で家賃滞納の解消を試みるようにし、強制退去は最終的な手段としましょう。では、具体的な交渉はどのように進めていけば良いのでしょうか。

家賃滞納者との交渉方法

強制退去は時間も手間もかかるため、まずは家賃滞納者との交渉を試みましょう。ただ、どのような手順で交渉を進めていけば良いか分からない方も多いのではないでしょうか。
ここでは家賃滞納者との交渉方法について、5ステップに分けて解説します。

STEP1.大家か管理会社から電話で催促する

家賃滞納から1週間以内に、まずは電話連絡によって、家賃支払いの催促を試みましょう。電話は大家からでも管理会社からでもかまいません。まずは、家賃の支払いが遅れている旨を電話で伝えます。

電話連絡は深夜早朝を避けてください。また、同じ日に何度も催促するのもやめましょう。勤務先・学校に連絡したり、連帯保証人以外の親族に連絡したりするのもNGです。これらの連絡は相手に精神的苦痛を与えたとして逆に損害賠償の証拠にされてしまう可能性があります。

STEP2.大家か管理会社が家へ訪問する

相手が電話に出ない場合や電話をした後も家賃の支払いが見られない場合は、直接訪問して家賃の催促をします。ただし、直接訪問においても電話連絡と同じように連絡する時間帯や頻度、連絡先には気をつけてください。訪問時の注意事項は他にもいくつかあります。

・部屋の鍵を交換
・家具道具の搬出や処分
・張り紙などで借主の滞納の事実を周りにも知らせる
・正当な代理人以外の訪問

これらは、すべて損害賠償が請求される可能性があり、強制退去を求める裁判でも不利な材料となるため絶対にやめましょう。

STEP3.請求書を投函する

1週間以上経っても家賃の滞納が続く場合は、「賃料についてのご連絡」として請求書を作成します。1週間程度の滞納であれば、支払いを忘れているだけの場合もあるため、文面もあまりきつくならないように注意して、支払期日も書かず「家賃の支払いを思い出させる」程度の内容にしましょう。

この請求書にて記載しておきたい内容は以下の通りです。

・請求書の発行年月日
・家賃滞納者の氏名
・対象の部屋番号
・物件名と部屋番号
・未納賃料:合計額と何ヶ月分の滞納か
・振込先の銀行口座

STEP4.内容証明郵便で督促状を送付する

滞納から半月を経過しても滞納が続く場合、内容証明郵便で督促状を送付します。何度か督促したが支払いの意思が見られなかったという証拠となりますので、必ず内容証明郵便にしてください。文面も多少厳しめに、タイトルも「賃料の支払い」についてであることを明示します。

記載内容としては、以下を網羅するようにします。

・支払期日の明示
・本来の支払期日
・期限内に支払いがない場合は連帯保証人に連絡を取る旨の警告

ここまでは本人への連絡にとどめていたが、ここからは連帯保証人にも連絡が行く、とはっきり言うことで、家賃滞納者にプレッシャーをかけて家賃を支払う方向に働きかけます。

STEP5.借主が交渉に応じなければ連帯保証人に連絡を

家賃滞納から1ヶ月以上が経過したら、1~2ヵ月の間に連帯保証人へも督促状を送付します。この時、同時に家賃を滞納している本人にも督促状を送ってください。連帯保証人へ督促状を送る前には、電話連絡をしておきましょう。

【本人へ送る督促状の内容】
・このまま家賃滞納が続くと賃貸契約解除も検討すること
・連来保証人にも督促状を送ったこと
・賃料と併せて遅延損害金も請求すること
・支払期日と合計請求金額

【連帯保証人へ送る督促状の内容】
・家賃滞納者の現状と滞納金額を伝える
・賃料と併せて遅延損害金も請求すること
・支払期日と合計請求金額

【ワンポイントアドバイス】実力行使をすると強制退去させられなくなる

家賃滞納者に憤りを感じるのは当然のことです。回収を焦るばかりに、つい強い態度に出てしまいたくなるのも無理はありません。

しかし、以下のようなことをしてしまうと大家側の「権利の濫用」とみなされてしまいます。そればかりか、損害賠償を請求される可能性があり、強制退去が認められない場合もありますので、以下の行為は厳に慎んでください。

・勝手に部屋の中に立ち入る
・退出を要求されているのに居座る
・大声をあげる、暴力をふるう、脅す
・家財などの持ち物を運び出す、壊す

最高裁判所第三小法廷 昭和40年12月7日・民集19巻9号2101頁の判決においても、「必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるにとどまる」とされています。

私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によつたのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。しかしながら、原審認定の本件における事実関係のもとにおいては、右のごとき緊急の事情があるものとは認められず、上告人は法律に定められた手続により本件板囲を撤去すべきであるから、実力をもつてこれを撤去破壊することは私力行使の許される限界を超えるものというほかはない。
引用元:最高裁判例 – 裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面 | 昭和38(オ)1236

交渉を進めていく中で、家賃滞納者が家賃を支払おうとする意志を見せた場合は、様子を見ながら「滞納した家賃の分割支払い」や「家賃の支払日の見直し」に応じることも検討してみてください。

家賃滞納者に経済的な余裕がなく、罪悪感も持っているが仕方なく支払いが遅れているということが伝わる場合、ある程度支払いがしやすい条件をつけることで、結果的に家賃が支払われるようになる可能性が高くなります。強制退去で余計な裁判費用を支払う必要もなくなりますので、お互いのためにより良い方向で支払い条件を決めてください。

ここまで手を尽くしても、支払う姿勢が見られない場合は、強制退去の手続きをしていきましょう。

家賃滞納者を強制退去させるまでの流れとかかる費用

家賃滞納から3ヶ月以上経過し、支払いの意思が見られない場合、いよいよ強制手続きに入りましょう。強制退去させるにはどのような手続きを踏めば良いのでしょうか。
ここもステップごとに詳しく解説していきます。

STEP1.内容証明郵便で契約解除通知をする

家賃滞納者本人と連帯保証人への連絡をしても家賃が支払われず、家賃の支払期日から3ヶ月以上が経過すると賃貸仮契約解除の効力が生じます。ここでもう一度、家賃滞納者本人と連帯保証人双方へ家賃支払いの最終通告をしましょう。

ここまでしても家賃の支払いがない場合、契約解除に進みます。契約解除を内容証明郵便にて通知しましょう。契約解除の連絡をしても、家賃滞納者が部屋を出て行かない場合、次のステップとして部屋を明け渡すよう、裁判を起こすこととなります。

STEP2.不動産の明け渡し請求の申し立て

契約解除後も家賃滞納者が立ち退かない場合、裁判所に対して不動産の明け渡し請求を申し立てます。明け渡し請求にかかる費用は以下の通りです。

・収入印紙代:訴訟の目的価格により変化
・予納郵便切手:約6,000円

収入印紙代については、不動産の時価総額によって金額が変わります。訴訟の目的価格が100万円以下の場合は、10万円につき1,000円、訴訟の目的価格が100~200万円の場合は、20万円につき1,000円です。
例えば、家賃滞納などの合計額が50万円の場合、収入印紙代は5,000円になります。

明け渡し請求時に準備する書類も多くありますので、漏れのないようにそろえてください。

・不動産登記簿謄本
・固定資産評価額証明書
・代表者事項証明書(法人の場合)
・証拠書類(建物賃貸借契約書、これまで送付した内容証明郵便と配達証明書)

STEP3.明け渡し請求の訴訟

明け渡し請求の訴訟は、物件の明け渡しだけではなく、滞納家賃の請求も可能です。申し立てから実際に裁判が開始されるまでの期間はだいたい1ヵ月ないしは1ヵ月半と言われています。1回目の裁判で被告人が欠席した場合は、訴えた内容通りの判決が下ります。しかし、通常は被告人も出席しますので、1回目ですぐに判決が下ることはそうそうありません。

裁判が続く中で、話し合いによる和解に至る場合もあります。この時は、和解調書が作られます。和解調書は、裁判の判決と同様の強い効力がある点が特徴です。和解調書に記載された通りの内容で、被告側・原告側共に対応しなくてはなりません。家賃滞納者が和解調書に従わない場合は、もう一度提訴する必要もなく、そのまま強制執行が可能になります。

STEP4.強制執行の申し立て

家賃滞納者が明け渡し請求に応じない場合、明け渡し請求で出た判決だけでは執行力がありませんので、執行文付与の申し立てを行います。さらに、強制執行するには、判決文が被告側に届いていることを証明しなければなりません。判決から判決文送付までにはおよそ1~2週間かかりますので、判決から2週間を目安に送達証明書を申請しましょう。

ここまで準備ができたら、強制執行の申し立てを行います。必要書類は以下の通りです。

・申立書
・送達証明書
・執行文の付与された判決の正本
・大家さんか家賃滞納者のどちらか一方が法人の場合は資格証明書
・該当物件の住所が示された地図

費用は、相手方が1人で物件も1件の場合は65,000円です。相手や物件が増えるごとに25,000円必要になります。

STEP5.裁判所を通じて立ち退きの要請

強制退去の申し立てを裁判所が受理すると、裁判所から家賃滞納者宛てに、立ち退くよう請求する催告状が届きます。この催告状を受け取ったら、家賃滞納者は指定してある期日までに部屋を明け渡さなければなりません。強制執行が実施されたら、居座ることはできません。

裁判所からの立ち退き要請を受け取って家賃滞納者から何のアクションもない場合は、催告状に記載のある期日以降、強制執行に踏み切ることになります。

STEP6.強制執行

強制執行とは、法律上の権利・賃金債権・建物明け渡し請求権などを強制的に実現する手続きのことです。強制執行は、強制執行担当の裁判所の職員(執行官)が現場に赴き、家賃滞納者を退去させることになります。

ポストや電気メーターなどを見て居住状況を確認し、屋外からの呼びかけに反応しない場合は鍵を強制的に開けて室内に入り、家具・テレビ・パソコンといった動産類はすべて運び出して部屋の中を空にし、荷物はそのまま倉庫へ運送。大家さんが荷物の処分を検討します。空になった部屋の中壁に、断行期日を記載した催告書・公示書を掲示して終了です。

強制退去の費用は以下の通りです。

・解錠費用:1回約2万円~
・運搬費:1Rの場合で約10万円~ 一軒家の場合は約30~50万円
・廃棄費用:約2~4万円

裁判費用を安く抑えるには

ここまで見てきた通り、家賃滞納者の強制退去まで対応した場合、必要な費用は以下の通りです。

・明け渡し請求(請求額50万円の場合):約11,000円
・強制退去:約14~56万円

特に強制執行は、荷物の運搬費が高額になります。できれば、強制執行による立ち退きを避ける方が、裁判費用を安く抑えられるので、ここに至るまでの間に、以下の方法を検討しましょう。

・強制執行前に立ち退きしてもらう
・とにかく家賃を確保するだけなら、明け渡し請求ではなく支払い督促や少額訴訟を検討する

明け渡し請求から強制執行の直前、裁判所からの立ち退き要請が届くタイミングで、ここまで粘ってきた家賃滞納者もかなり焦るはずです。もしこのタイミングで、立ち退きの期日調整の連絡が入れば、よほど日にちの引き延ばしにならない限りは、自主的な立ち退きを待つのもひとつの方法です。

また、家賃の確保だけなら“支払い督促”や“少額訴訟”の方が費用を安く抑えられるので、検討してみるのも一手です。

家賃滞納者とのトラブルは弁護士に相談すべき?

家賃滞納者とのトラブルを弁護士に相談すべきかどうかは悩ましいところです。相手に裁判や弁護士の費用も請求できますが、家賃も支払えない相手が弁護士費用を払えない可能性はかなり高いでしょう。

弁護士に相談するメリットとデメリットを整理します。

【メリット】
・裁判前の解決も可能
・法律に詳しいため、迅速に処理してもらえる
・裁判や手続きなどを代行してもらえるため大家さんの精神的負担が減る

【デメリット】
・強制執行までいくと弁護士費用も含めて高額になる
・裁判や弁護士の費用も相手側に請求すると相手が破産して回収不能になる可能性がある

弁護士に依頼するかどうかは、「相手側に立ち退いてもらいたいかどうか」、滞納金額が高額で「弁護士にお願いしても十分もとが取れるのか」、という点が判断材料となるでしょう。弁護士によっては無料相談などを受けてくれるところもあるため、まずは相談してみることをおすすめします。

まとめ

家賃滞納者を強制退去させるまでの流れと必要な手続き、かかる費用について解説しました。

強制退去までしてしまうと、大家さんもかなりの支出になってしまうため、家賃が必要なだけなら、少額訴訟を起こすという方法も検討しましょう。部屋の明け渡しを求めるなら、強制退去前の明け渡し請求までは進めて、最終的に任意退去となるような流れにすると費用が抑えられます。

大家さん自身が最終的に何を目標としているかを明確にして、可能な限り費用を抑えるように行動しましょう。

 

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